藤田浩之の誤算
作:雲流 雪
第1章
きーんこーんかーんこーん……
ふー、やれやれ。これで今日の苦行も終わりだ。
それにしても、保体の伊藤のやつめ。毎回、授業をのばすなっての。
だいたい、なんなんだ? 今日の授業は。正しい歯ブラシの使い方だと。
俺らは幼稚園児じゃねぇんだぞ、ったく。
仕方ねぇから、特別に俺が居眠りの時間にしてやったぜ。
せいぜい、ありがたく思うんだな。
よし、じゃあもう一眠りするか……
「浩之ちゃ~ん。また、今日も寝てたでしょ。今日、テストのポイントを解説してたよ。
聞いてなかったでしょ」
「な、なんだって、あかり、本当か?」
「うん、本当だよ」
くっそー、なんてこった。聞き逃してしまった。
それにしても歯ブラシの使い方の何をテストするんだ?
文部省の学習指導なんとかってのはクリアされてんのか……?
ま、いいか。テストのポイントはあかりに聞いておこう。そのためのあかりだ。
「まったくもう……。しょうがないな~」
「ま、そう言うな。ってか、ひとのセリフを盗るな」
ん? 待てよ。あかりってたしか違うクラスのはずじゃあ……。
「バッカねぇ~、あんた。テストのポイントを聞き逃すなんて。
ま、どうしてもというなら、この志保ちゃんさまが教えてあげてもいいわよぉ~」
ちっ。志保のやろう、髪の毛が緑色で、頭が悪くて、
年中補習をうけているどっかの女子高生のようないいかたをしやがって。
おかげで、今なにか、重大なことを思いついたような気がしたのに
忘れてしまったではないか。
「テストのポイントを聞いてても、赤点をとるようなやつに言われたくないね」
「きぃ~~! なんですって~~~!!」
ふ、勝ったな。
「まあまあ、ふたりとも」
絶妙なタイミングで雅史が仲裁をする。こいつも、なかなかやるようになったな。
よし、俺内部雅史ポイントを1点あげてやろう。よかったな、雅史。
あ、ついでに志保ポイントを2点さげてやろう。ざまあみろ、志保。
あかり、おまえは、上がりも下がりもしていないぞ。すこしは、頑張れよ。
「あ、そういえば、今日、なにか重大な発表があるから、
6時限は、体育館に集まるようにって言ってなかったけ」
「そんなこと言ってたかぁ~?」
「あ、そうだよ、早く行かないと……」
「おい、志保、おめぇの出番だ。いったいどんな発表をするんだ?」
「それが、あたしの情報網をつかめめないのよねぇ~」
「ちっ、使えないやつだな。くだらないガセ情報ばかり仕入れてねえで、
すこしは役に立つ情報を仕入れろよ、ったく」
「なによ、あたしはあんたの便利屋じゃないのよ」
「早く行かないとほんとに遅刻しちゃうよ」
「そうだな、はやくいくか……」