藤田浩之の誤算

        作:雲流 雪



序章


 春はもう、すぐそこまできていた……。



 はずだったが……


「あー、寒みー」

 彼がそういうのも無理はない。
 3月も終わりに近づいたというのに、真冬並み
 とは、いかなくても、かなりの寒さである。


 ったくよ~、なんで、こんな寒い日まで、学校に行かなくちゃないけないんだよ。
 誰が、決めたんだ。こんなこと。責任者を呼べ、責任者を。

「浩之ちゃーん、責任者なんていないよぅ。
 それより、早くしないと遅刻だよぉー」

 あ、あれ、今、俺、口に出したか?
 い、いや、そんなはずはないぞ、いったい、どうなってんだ?

「浩之ちゃーん、早くしないと遅刻だよぉー」

 あ、そうだったな。とりあえず、今は遅刻しないことを、最優先に考えねば……
朝、遅刻しないためだけにしか活用できない早さで身支度を整える。






「待たせたな、あかり。ダッシュで行くぞ」

「え、そ、そんなぁー、待ってよぉー、浩之ちゃーん」




 こうして、今日もいつもと変わらない一日が始まり、そして終わり……
 そんな日々がずっとつづいていくはずだった。



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