「ヒロ~~。あんた、もしかして帰るの?」
くっ、とうとう捕まった。
こないだはテスト期間中に捕まってとんでもない目に遭った。
結果が怖い。怖すぎる。赤を通り越して、〇にいった教科もあるかもしれん。
しかも、地理は補習が確定している。
もう、志保に関わるのはやめようと思っていたのに。
……まあ、新しくゲーセンに入ったゲームをマスターするまでの間なんだが。
「まあな。何の用だ?
どうせ、ろくなことじゃないだろうが、聞かないと話が進まないから聞いてやる」
「ま~、確かにろくでも無い話ではあるわね」
「なら帰るぞ」
「ちょっと~、ろくでも無い話ではあるけど、大事な話よ」
なんだそりゃ。……でも、気にはなるな。
いや、これは作戦か……?
「あんた今日、地理の補習よ。知らなかったでしょう~?
ま、寝てて聞いてなかった、ってとこでしょうね」
なに! 今日だったのか。
今日はゲーセンで特訓をする予定だったのに……。
そして、なによりもむかつくのがこいつの得意げな顔だ。
情報源は……あかりか雅史だろうな、やっぱ。
「なんで、もっと早く言わねえんだよ」
まあ、考えてみれば充分に予想されうる事態ではあったな。
「あんたがこそこそ逃げ回ってたからでしょ」
そういや、そうだった。
「で、どこでやるんだ? 早いとこ終わらせて、さっさと帰ろうぜ」
「あんた、勘違いしてない? 今のは私も補習を受けるような言い草だったけど」
「お前、補習じゃないのか?」
てっきり、志保も補習かと思っていた。
なんてこった。俺だけかよ。
「いいえ、補習よ」
胸を張って言うことじゃないだろ。
「なんだ、やっぱ、そうじゃね~かよ」
「まあ、確かに今回はそうだったかもしれないけど、
あんたが補習だからって私が補習とは限らないでしょ」
くだらないプライドだ。いや、間違ったプライド、とでも言おうか。
「いや……限るだろ」
「あ……そう、あんたサボるのね。地理の葉月にそう伝えとくわ」
なんて奴だ。だが、ここで怒ってはいけない。俺の理性がそう言う。
悔しいが下手にでるしかないか……。
「悪かった。教えてくれよ」
「ふむ、なかなか良い心がけね。どういう風の吹き回し?」
こ、こいつは~、下手に出たからっていい気になりやがって。
だが、ここで怒ったらさっきの理性がまったくの無駄に……。
「どうだっていいだろ。さっさと行こうぜ、時間だってそんなにないだろ」
志保が時計を見ながら言う。
「う、それもそうね。まあ、あんたもたまにはいいことを言うのかもしれなくもないということね」
また、訳の判らん日本語を……。
そうこうしているうちにも俺達は補習が行われる部屋に着いていた。
ってゆうか、目の前の教室だった。
「「失礼しま~す」」
中にはもう、葉月が来ていた。
……地理の先生だ。若い男だが女生徒の人気はない。
かといって、顔が不細工なわけでもない。まあ、顔は普通といっていいだろう。
それなのに、モテないのは、やはり性格が悪いのだろう……。
うちのクラスの地理を担当しているのは別の教師なので事実は知らんが。
「遅いぞ」
「すみません」
素直に謝る。
「すみませ~ん、ヒロ、いえ藤田君が補習のことを忘れていて呼びに行っていたんです」
志保の奴、余計なことを~。
しかし、あながち間違いといえないのがつらい。
「ほお~、どうやら藤田はみっっちり勉強したいようだな」
「いえ、その……」
くっそ~、志保のやつめ、今度あったときぼこぼこにしてやる。……ゲームで。
「とりあえず席に着け」
そこで、さっきから俺が疑問に思っていたことをたずねる。
「あの……補習って俺達だけですか?」
「そうだ」
…………。作者の手抜きだろうか?
それとも俺達があまりにも……いや、作者の手抜きということにしておこう。
事実はどうであれ、そっちのほうが俺のプライドも守られる。
「藤田、お前、日本にいくつの県があるか判ってるか?」
俺たちが席に着いたところを見計らって葉月が言う。
いくら、俺だってそのぐらい判る。
答えは47だ。
そう言おうとして、この問題が引っ掛けだということに気付いた。
そう、葉月は“県”と言ったのだ。“都道府県”ではない。
ということは47から北海道、東京都、大阪府、京都府をひいて答えは……
「43です」
「不正解だ。長岡、言ってみろ」
なに~?! 違ったのか? じゃあ、答えは一体……?
「は~い、47で~す」
志保、それは都道府県の数だ。
「うむ、正解だ。藤田、こんな問題、小学生でも解けるぞ」
正解だと~、何故?
待てよ……こいつ、勘違いしてるんじゃないだろうか。
たぶん、都道府県の数を問いたかったのだろう。
「先生、47って都道府県の数じゃないですか? 県の数は43ですよ」
ふっ、狩った……もとい勝った。
「なに寝惚けたことを言っているんだ? 都道府県の数は50だろう」
50? 何の数だ、それは?
そうかっ、アメリカの州の数かっ!
「先生、それはアメリカの州の数ですよ」
「まだ寝惚けたことを言っているのか? アメリカの州の数は51だ」
「え? 本土は48で、アラスカとハワイを足して50じゃないんですか?」
いや、そのはずなんだが……。
「本土は48だが、飛び地の数が違う。アラスカとハワイの他に日本が抜けてるだろう。
まったく、自分が住んでいる場所を忘れるとは……」
…………。マズイだろ。たしかにうちは私立だし、思想の自由もあるが……。
いや、この問題に関しては深く突っ込むのはやめておくか。
「ところで、日本の県の数って……」
「47だと言っただろう」
差の3つはどこから出てきたんだろう……。
「藤田、お前は世間一般の基準で物事を見ているのだろう」
……まあ、あんたに比べればそうかもな。
「日本にはな、世間一般に知られていない県もあるんだ」
どういう県だよ?
「例えば、雫の舞台、K県、まじかる☆アンティークの舞台、某県、誰彼の舞台、島神県だ。
私は一般に知られている県以外にこの3つの県を採用している。
中にはズッコケ3人組の舞台の県を採用している地理の教師もいるぞ。
小学校の教諭には割とこのタイプが多い」
なるほど、そういうことか。って納得するわけにもいかないが、でも……。
「もしかして、先生、葉っぱ系ですか? いや~、俺も好きなんすよ、葉っぱ」
「そうか、藤田もか。いや~、お前も同志だったとは。嬉しいぞ」
作戦成功だ。俺がお前の同志だと? 冗談じゃない。
そもそも、俺はパソコンなんて持ってないしな。
「ところで、藤田。おまえ、高2だったよな」
「ええ、そうですけど」
いきなり、何を言い出すんだ?
「なぜ、お前が18禁ソフトのことを知っている?」
「しまったっ!!」
「いや、でも先生、さっき、同志だって……」
「それとこれとは話が別だ」
そ、そんな……。何とかして話題を変えないと……。
そう思い、周りを見渡したが何もない。
……何もない?
「先生っ、志保がいつの間にか消えています!」
「……後で対処する。今はお前のことだ」
どうしよう? 俺の脳がフル回転で過去の出来事を思い出す。
「……そういえば、志保はどうして県が47だって判ったんでしょうかね~?」
「都道府県と勘違いしただけだろう」
「そうですね、いや~、あいつも馬鹿ですね~」
「そうだな。だが、そんなことより今はお前のことだ」
だ~、ちょっといい感じだったのに……。
THE END
後書き
久しぶりのSSです。
ところで、パソコン持ってない割にはタイトルを聞いただけで、
葉っぱだとわかった浩之は何者でしょうか?(爆)
……まあ、何気に声優さんのラジオを聞いている人だし。(ォ
leafing heartへ